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シオの後で並んでいた少女は受付の青年の前に立った。
少女は赤みがかった茶髪のショートボブに緑色の瞳をしておりその立ち振る舞いにはどことなく気品がある。
「入学おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
青年の祝いの詞に少女は微笑んで礼を云った。花の蕾が綻んだような可愛らしい笑顔だ。
青年はそんな笑顔に一瞬見とれたが、すぐに気を取り直した。
「っと、じゃあ学生証見せてくださいな。」
少女はブレザーの胸ポケットから学生証を出した。
青年は学生証を受け取ってまた名簿に目を移す。ふと青年は少女の名前に目を留めた。
『シェリル・ハウルロイド』
青年はジッと少女を見上げた。下にクマを添えているが、青年の目は鋭い光を湛えている。
シェリルと云う名の少女は顔を反らしていた。ただそっぽを向いているようだが視線は宙を浮いている。
体の中の心臓を見抜くような青年の視線を受け流そうとしているようだ。
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