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椅子から立ち上がり、鞄に自分の道具を詰めながらリントはヲリエに云った。
「如何様にも出来ない代物ばっか。出したら生徒会(スクールチルドレン)に何されるか…。」
「そんなの関係ないね!重要なのは知られる側の人。」
陽気な調子は変わらないが、ヲリエの言葉には張り詰めた強さがある。それも、磨かれた強さが。
ヲリエはリストに目を通しながら続けた。
「ネタが知られるべきかどうかなんて初めからわかるもの。本人がそれを知られる勇気があるかどうかってこと。なかったらそれまでよ。」
ヲリエはリストを読み終わり、カウンターに置いた。前屈みに伸びをする。さながら猫だ。
リントは立ち上がり、振り返った。
「誰にも知られず記憶の海に沈みゆくだけの真実を追いかける意味は?」
遠い場所から見ている冷めた他人のような響きを含み、リントの目つきも他人の在りようをただ観察するそれになっている。
それにヲリエは温かな笑顔で答えた。
「アタシ達だけが知ってるだけでも何かは変わるよ。少なくとも、アタシは何かを変えてみせる。」
強く、優しく放たれたヲリエの想いにリントは気づかぬうちに笑みを綻ばせていた。
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