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ステージの袖にて。
レイル・コンスタンティノーブルはメイデン・メタルパレスにネクタイを直してもらっていた。
「身嗜みくらい気を使いなさいよ。」
メイデンの節介にレイルは笑う。
「別に構わないさ。格好で全てが決まるような法則はない。」
弁士のように滑らかな口振りのレイル。
「バカじゃないの。私に愛されてるなら自覚なさい。」
メイデンが高い声でピシャリと云い、レイルの顔を見上げた。
銅色の瞳がレイルの顔を見つめている。
「ハイハイ、心するよ。」
レイルの態度は変わらない。が、どこか安らいでいるようだ。
メイデンはレイルのネクタイを直し終わっているが、まだ掴んでいる。
そのまま、さっきより幾分低い声で云った。
「…このネクタイを絶対に外れない首輪に変えたら、どう思う?」
「それはそれは刺激的な夜になるだろうね。」
レイルの口調は楽しげだ。だが、メイデンはそのジョークに乗らなかった。
レイルはそれを察し、さっきよりゆっくりした調子で返す。
「キミなら出来るんじゃないか?」
メイデンには素っ気ないように聴こえた。
「相手があなただもの。M過ぎるのも考えものね。」
突き放すように云ったメイデンだが、その手はまだネクタイを掴んでいる。
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