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突然メイデンの右頬にレイルの手が添えられた。
大きく、温かい手は徐々に上がり、メイデンの薄い紫の髪の束を掻き上げた。レイルの長い無骨な指はメイデンの髪を軽く解かし、また頬を撫でてソッと滑り落ちた。
手が離れた時には、メイデンは知らぬ間にレイルのネクタイを放していた。
「…最後に生徒会会長(プレジデント)、レイル・コンスタンティノーブルより入学生の皆さんへのご挨拶を…」
袖に近い場所にセットされているはずのスピーカーから流れるアナウンスがメイデンには何故か遠く感じられた。
「もう行くよ。」
レイルはそう云ってメイデンの返事を聴かずに振り返り、ステージへ向かった。
メイデンは何も云えず、何もしなかった。
暗い袖に一人残されたメイデンは静かに唇を噛み締めた。
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