4.スタートライン

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「ん?どうしたのシオ?」 黙り込んでいるシオにアレンが気付いた。 「あっ、いや…」 「大丈夫か?どっか具合悪いのか?」 リクが心配そうに云った。 「何でもない、何でもないよ。」 シオはそうは云ったが、続く言葉が無く、また黙った。 二人にはまだ記憶の欠落を話していない。 今更になって後ろめたさが湧いてきた。 すると教室のドアが開き、フード付きのロングコートを纏った男が入ってきた。手にはファイルを持っている。 外見は二十代半ばくらい、眠そうな目をしており、時折欠伸をこぼしていた。 教室内が静かになった。1-Bの生徒全員が今日初めて見た大人だ。 講堂でレイルを前にした時とは違う沈黙が教室に満ちた。 「えーっと、ハイ。皆さんお早う御座います、こんにちは、初めまして、これからもどうぞヨロシク御願いします…あぁ、これは自己紹介の後か、ふむ。」 男はつらつらと独りで呟く。挨拶がどこか見当違いの方向に飛んでおり、ちゃんと伝わっていない。前列の生徒は怪訝な顔をしている。 「あー、俺はー、ここのー…あぁ、1-…Bか、の担任になりまー…、す、カークスです。カー…クス、ヴァレンタインでー…す。」
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