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「んぁ?あ、あぁシオか…。別にカークスでいいぞ、今はな。」
カークスは立ち上がって吸いかけを携帯灰皿に入れようとしたが、相手がシオと確認すると煙草を銜えて再び座る。ついでにフードも取った。
眠そうな目は相変わらずで、どこに視線をやっているかわからない。
「お前…アレ…、災難だったなぁ。」
アレとは無論シャーロックの一件だ。
「あー…うん、結構大変だった。友達気絶しちゃったし…。」
カークスが初めてシオと目を合わせた。どことなく意外そうだ。
「…そっか。」
カークスは低く呟いて煙を吐き出した。
「一日目は、お前どうだった?」
教室で話すより口調は滑らかだ。
「色々、ビックリ。」
「変な奴ばっかだからなぁ、今年。まぁそんなの今に云えたことじゃねーがなぁ…。」
「うん…なんか、俺と違う感じがする。」
レイルの演説で感じた衝撃はシオの中で別の属性のモノに変わっている。
レイルと自分の間の距離感と、淡い希望。
前者はわかるが、後者はシオには掴みきれていない。
だが、だからといって不安になることは不思議と無かった。
「違う、感じ、ねぇ…。」
カークスは煙草を吸った。先端が赤く光る。
「初めはそれにどう接したらいいかわかんなくて不安だったけど、今は…そんな感じじゃないんだ、誰かと話したり、接したりする度に、まるで…お腹の底から湧き上がる力が、心臓を揺らしているような…。」
シオは語気が少し高ぶっている。横から見たシオの目線は高く、いつもより輝いていた。
カークスはその湧き上がるモノの正体はわかっていたが、口には出さなかった。
「まぁ、あんなたくさんの同い年と付き合うのは初めてだから、色々大変だろうがぁ、まぁ頑張ってくれー。」
「うん。」
「キツくなったらな、一人ぼっちになりゃいい、孤独気取ってりゃ上手くいくさね。」
アドバイスにしては少し無機質な色合いがある言葉だ。
「あ、うん…。」
その言葉をどう取ればいいかわからず、シオは曖昧に返した。
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