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「二人共……。」
シェリルは僅かばかり声を張らせた。
「うん?」
「何?」
「無理に…無理に私と付き合わなくてもいいよ。嫌なら、素直に嫌って云って。」
どれだけ明るく取り繕っても、陰にある張り詰めた緊張や靄に似た躊躇いは隠しきれない。
心意を突かれたデイジーは困惑した表情を浮かべ、エリスは血の気が薄くなった唇を引き結んだ。
「でも……」
続けたシェリルの声に明るみを感じ取れたのに、デイジーは思わず顔を上げた。
「二人が…私の事…嫌に思ってても、…そうでなくても、私とこうして付き合ってくれているのは…嬉しいよ、すごく。…ありがとう。」
半ば思考が飛んでしまうくらい緊張しながら、シェリルはそっと、微笑んで見せた。
愛想を忘れて笑うのが、何だかとても久し振りな気がしてしょうがなかった。
「…あっは、ゴメン…。」
急に情けなくなってきてシェリルは顔を伏せたが、顔はくしゃくしゃになっていた。
「嫌だったら、付き合わないよ。」
デイジーがシェリルの肩を、優しく持ち上げた。
「あたし、好きな振りして人と付き合うのは苦手なんだ。」
また、いつもみたい妙に自信満々に云うデイジーの顔が心強く、温かにシェリルの胸を打った。
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