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しかし一番驚いていたのはエリスのようだ。
すっかり面食らった顔でキョトンとしている。
が、その顔は寂しげに崩れた。
「そ、そんな事ないよ…シェリル…。」
いつもハキハキ話す、彼女らしくない覚束ない口回しだ。
エリスの胸の内にも、シェリルのに似た情けなさが溢れ出ていた。
底から鼻腔に圧力を持ち上げているような感覚。押し負けないよう、崩されないよう、エリスは堪えた。
「あぁ~…ゴメンね、なんか…。何でもないの。」
エリスは笑顔をアピールしながら取り繕う。
「こっちこそ…ね、ありがとう。私も、シェリル好きだよ。」
最後のフレーズが弱くなった。
どうして?ハッキリ云ってしまえ。
あの子は、許してくれる。
でも、私は……。
エリスは頭を振って余計な思考を吐き出す脳を黙らせた。
「私も、シェリルが好きだから。」
鼻先と耳たぶが赤く染まるのをひしひしと感じながら、エリスは込み上がった言葉をただそのまま伝えた。
聴いたシェリルは、はにかみながら、そっと、笑顔を綻ばせた。
不思議だった。
シェリルを気に掛けていたのはエリスなのに、何故だが一番安堵しているのもエリスだった。
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