22.それでも、僕は

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リクがヴァンクラウンと逢い、シェリルがエリスとデイジーに遭遇し、ラウルとアレンが彼女を探し回っている頃合い。 シオは食堂へ向かうルートを歩いていた。 その歩調は、歩幅は一定ではない。 忙しく靴底で床を打つ事があれば、一歩一歩が重く踏み込まれる。 シオは葛藤している。 決意の裏で迷いと躊躇いが波打ち、その波紋が足に伝わっている。 しかし、決意は微動だにしなかった。 堅固に胸の内に立っている。 それを支えるのは、ダンジョンプレイや、日々の生活で感じた、仲間と共に笑い合う安らぎと喜び。 シオには鮮烈に感じたそれらは、くすまぬ残照になってシオに優しい灯を咲かせていた。 「ん……。」 様子がおかしい。 シオは進む毎に異色の喧騒に包まれていくのを察した。 激しく交わされる流言、揺らめく足音、日常に罅が入ったのを暗示する表情。 (何かが起こっている……。) それも、良くない事が。 シオは狂った流れに身を投じた。 澱みで先は見えない。
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