22.それでも、僕は

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多目的広場は、異様な空気に満ちていた。 口から声に、呼吸に乗って吐き出される殺気が目に見えそうな程空間を埋め尽くす。 焦燥と戦慄を撒き散らしながらブリジット達が歩くのが目に入る。 さながら亡者の行列だった。悲哀や憎悪を胸に秘め、喪に服した人々。 濁った剣幕の彼女らに、恐れた者は道を空け、哀れむ者は切なげに見つめ、興味を覚えた者は密かに付いて行く。 ブリジットに同調する者、野次馬根性で付随する者が行列に加わり、行列は一層大きく蠢く。 怒りの声、興奮の震え、嘲りの笑い…。 幾多の声を振り撒き、ただ接するだけの絆で、彼女らは結ばれていた。 (シェリル……!) 約束を交わした人が頭に過ぎる。 彼女が負うには重すぎる。 彼女が抱えるには辛すぎる。 彼女が繋ぐには多すぎる。 償いのラベルを付けた粛正。 「ダメだっ…!」 シオは立ちはだかった。 ブリジット達の、絞られた焦点に立った。 シェリルを守る為に。 彼女を止める為に。 シオは立ちはだかった。 これもまた、約束であったかのように。
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