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「解っている…というか、何度も云われた…。けどそれって…結局何なの?『どうせ無意味だから諦めろ』って事?」
帳の中に何かが黒々と湧く。
「『人を恨むな』『悲しみを乗り越えろ』『明日へ進め』…やめてよ!もう止めて!私はそんな器用な人間じゃない!そんな強い人間じゃない!そんな善い人間じゃない!どんな事があっても私の中には何時までも、憎悪と悲しみと怒りと喪失感が溢れている!」
「だからってそれを誰彼かまわずにぶつけ続けていいのか!君のお姉さんはそんな事を望んでいるのかっ!」
シオは彼女が痛ましかった。
反論する自分が、ブリジットを否もうとする自分が残酷ですら感じられた。
良心が痛むようなモノじゃない。
堪らなく、悲しかった。
「あなたがお姉ちゃんを引き合いに出すのはやめて!どう振る舞うか決めるのは私だけよ!お姉ちゃんが何を思うかどうこうじゃない…!私がっ!決めたのっ!」
ブリジットが柄杓を持ち直した。戦闘の構え、殺気が沸き立っている。
「この悲しみも…怒りも…憎しみも…私のモノ…!認めてよっ、認めてよぉっ!」
彼女から殺気が流れ出た時、澄んだ雫が瞳から落ちた。
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