22.それでも、僕は

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迫る水流にシオは軋む体を無理に振り回してやり過ごす。 「おいブリジット!いい加減に……」 「シオ君は関係無いでしょ!」 さすがにブリジットの勢いを危惧した面々が制止に掛かる。 しかし、ブリジットの足元から飛沫が弾けて周りの人間を遠ざける。 「…あなた達はどうせ流れに乗っているだけでしょ…?私を担ぎ上げて勝手したいだけなら構わないでくれる…?」 暗い炎を瞳に焚くブリジットに周りは怯む。 「そうだぜ!邪魔すんならぶちのめせ!」 「ハンパな野郎は消えろ!」 ブリジットを制止しようとした面々とは別の連中が喚き出す。 乱反射する鬼気に彼らは溜まらず行列から離れ、散り散りになる。 「ブリジットっ……!君は…!」 「何よ…まだあるの…?もう止まらないのよ…私は…私はぁっ!」 ブリジットが柄杓を叩き付け、自らの内から魂を呼び起こす。 「服せ、ベルベット!」 陰坊主より深い黒が染み込んだ魔人が、現出する。 微かに見せる鈍い光沢は悲しく煌めいていた。
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