22.それでも、僕は

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ベルベットは音も無く蠢き、右腕を一気に伸ばした。 「っ!!」 反応が遅れた。 ローブの袖口から覗く刃がシオの右肩に埋まる。 「…っっっ!!」 衝撃と響く熱と痛みにシオは顔を歪め、吹き飛ばされる。 シオの体は床に叩き付けられ、壁に激突した。 野次馬から悲鳴が飛び出し、蜂の巣をつついた騒ぎになる。 ブリジットの背後の連中の何人かはこの光景を見て顔色を変えたが沈黙を深める事で隠し通した。 はやし立てる声もまだ少なからずある。 しかし、初めにあった行列の整調さは消えていた。 各々が考えるまま、寄り合おうと密かに想っている。 「んっ……ハァッ…!」 シオの意識は混濁している。 ベルベットに付けられた傷は浅いが出血はしているし、何より壁にぶつけた時の衝撃で軽い脳震盪も起こしている。 野次馬の何人かが寄り添って声を掛けるが、声は上手く聞き取れない。 シオは朦朧としながらも立ち上がり、手で周りを制しながらブリジットを見据え、進み出す。 ブリジットの傍らに立つベルベットは再び蠢き、刃を突き出した。
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