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数時間前、ブリジットとヴァンクラウンが接触している時分。
「何の話ですか…?」
なぶるやらくびるやら、物騒な台詞を並べ立てるヴァンクラウンに対する警戒は解かぬまま、耳を傾ける。
「…実はシェリル本人からの頼まれ事をされてね…。」
「シェリル…?!」
「そう…シェリルだ…。」
やむを得なく興味を注いでしまうブリジットにヴァンクラウンは笑みを送る。
「事が大きくなる前に身を窶したいそうだ。」
「…っ!!」
遠回しな表現だが、核心は理解した。
「判るな?…シェリルはどうやらサンドハーストから別の学校に移りたいそうだ…その口添えを俺に頼んできた。」
今にも、狂おしく跳ね回る心臓の音が漏れ聞こえて来そうになる。
乱雑に、無節操に飛び回るそれはゆっくりと集約し、一つのハーモニーを奏でる。
憤りのタランテラ。
「…どうして、私にそれを…?」
ヴァンクラウンはオーバーに嘆息する素振りを見せ付けた。
わざとらしさが鼻につく動きだ。
「…縁戚ではあるが…シェリルの小心振りには反吐が出てね…。一族の過去から背き続ける姿に見かねたのさ。これ以上威光を汚されるのは堪らない。」
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