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その光景は、有無をいわさず言葉を奪う。
胸が竦み、手足は凍る。
ブリジットの召還体、ベルベットが黒い怪しげな体をくねらせ、両手に根付いた刃を、細身のシオの体の上を走らせる。
シオは覚束無い足取りでひたむきな回避を心掛けるのみで、小さな血飛沫を上げながら転げ回っていた。
「やな感じ……!」
いつも悠長な表情を絶やさないアレンが薄く青ざめている。
悪寒が肌を伝い、熱を吸い取って蒸発していくようだ。
「ブリジッ……トッ…!」
絶え絶えした声を張るシオを見たブリジットの顔が悲痛に歪む。
「もう…大丈夫っ…だからっ…!」
「なんでよっ、…なんでなのよっ!」
ブリジットの指示でベルベットが腕を振り抜く。
「なんで…いつもっ、いつもっ、いつもぉぉっ!!」
「っ!!!」
ブリジットの激情に空白は無い、滞り無く、そう驚く程滞り無くブリジットは連撃に移った。
シオの余力は乏しい。
これまでの一連の騒ぎはシオなりに考えを伴った行動だ。
だがその考えを解してもらうには余りにシオの言葉は足りず、不器用過ぎた。
そして、ブリジットが怯える程、深かった。
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