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「…ふぅ!」
オーバーに深呼吸をして、ラウルは振り向いた。
随分と大胆不敵だと自覚する。
ブリジットは泣き腫らした両目で睨む。
怒気の域を越えた敵意。
ラウルはそれを全身で受ける事を恐れながらも、しっかりと浴びた。
「ラウ…ル…来る…な…。」
シオはブリジットを見たままラウルに釘を刺す。
満身創痍でも鬼気迫る緊張感を保っているシオに、ラウルは息を呑んだ。
だが、すぐに淀みない言葉を紡ぐ。
「どうしてさ?」
「……それは…」
「此処にいちゃいけない人なんていないよ。」
「行き場の…無いっ、苦しみ…受け取る事は…」
「…うん、辛い事だ…。多分今僕が考えているより…ずっとずっと。」
ラウルはプレートを回収し、整列させる。
「でもね…それを君に…シオ独りに全部移しても何も変わらない、変わらないんだ。君の中で、それは行き場を無くすだけ。」
プレートはレキシコンの形状を取り、輝きを増す。
「次は…僕の番だ。」
ラウルはシオの傍らに立った。
絶え間ない充足感が満ちている。
自信が激しくせめぎ合う。
名前の冠など、その渦の中ではただ流されているばかりの漂流物だ。
今やれる事をやる一歩を、ラウルは確かに刻もうとしている。
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