22.それでも、僕は

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「あぁあっ!!」 ドーム状にシオとラウルを包むカレントストマックの内側がめくれ上がる。 それらが鞭のようにしなって床を鋭く引っ掻いた。 「来るっ!」 ラウルがクリアシェルの配置を変えて水の鞭を受け止めにかかるが、四方八方から鞭は迫り来る。 「庇いきれないっ…!」 ラウルが球状に展開して防ぐと、足が止まった所をベルベットが狙う。 ベルベットは右腕を伸長させ、遠心力を掛けて叩き付ける。 「うわぁっ!」 直撃こそしないが結界越しに衝撃が伝わる。 休む間も無くカレントストマックから攻め手が続き、結界を揺らす。 「くっ、だっ、けっ、てぇぇっ!!」 ブリジットの血気が急上昇する。 それに釣られてラウルの腹の底から弱気が鎌首をもたげる。 心臓を掴まれ、くすぐられ、ラウルのモチベーションは薄く削られた。 (根気勝負だな…。) 「ラウル。」 「んっ、何?」 消耗しているシオが久々に明瞭に話し掛けて来たのでラウルは驚きで声が少し上擦った。 「耐えきれなくなったら…クリアシェルを解いて離脱して。」 ラウルは一瞬詰まった息をゆっくりと、解して吐き出した。
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