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一時でも、弱気に包まれた自分が露わになったのではないかと、ラウルは恐れた。
いや、怖いんじゃない、恥ずかしい。
此処まで歩を進めた癖に、まだ足元が覚束無い素振りを見せる自分が。
本当はそんな素振りを見せる隙は無いのだ。それだけ自分の一歩は確信に支えられた、貴いモノだ。
そうだ、何を恐れる事があるんだ、何を恥じいる事があるんだ。
自分の中の、心の上に幾枚も重なった煩わしい皮を引き剥がし、剥き出しになったまだ様相を掴みきれない部分で編み出した答えだ。
未来がどうなるかなんて知る由は無い。
ビジョンがあるなら、それ相応の努力を負う気概を見せるだけの事。
その道程に置いて今自分が感じるモノは些末な、取るに足らないモノだ。
足をもつれさせる訳でも、気位を挫けさせる訳でも無い。
ただ心を皮越しに擽るだけだ。
気にする事じゃない。
シオが側にいる、アレンも認めてくれた。
こんなにも支えがある。
今はこの状況に間違いは見当たらない。
此処にある答えは、信じていける。
「あぁ、ゴメン、シオ…。」
情けなさを素直に示し、それでもちょっとした勇ましさをラウルは零した。
「もう少し、勝手にさせて。」
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