863人が本棚に入れています
本棚に追加
「シオがっ…?!」
第一声を上げたのはデイジー。
アレンにはそれが至極当たり前にも、意外にも感じた。
エリスは静かに、心の淵で何やら激しい思考を交錯させているとわかった。静止する体と裏腹に灰色の瞳だけが小刻みに揺り動いている。
動揺とは違う。
押し隠せない高ぶりに似ている。
シェリルはまた違う静止だ。
ゆっくりと頭の中で何かを積み重ねている。過去のフィルムのワンシーンを一枚ずつ、具に確認している。
そして、手繰り寄せられたフィルムが導き出す今のシーン。
フィルムを巻き終え、シェリルは深呼吸した。乱れた心が生んだ熱をゆっくりと冷ます。
「…まぁラウルが入ってるからさ、どうしようも無くやられる事は無いと思うけどさ。でもあの流れで反撃は無いし、ブリジットのあの剣幕…。チリペッパーを脳天にぶち込んだみたいのさ、加えてギャラリーも盛り上がっていて。放っておけないんだよねぇ、だからいち早くシェリルには身を隠して頂いてさっさと馳せ参じたいワケでさぁ。」
「あたしも行く。」
デイジーが一歩詰め寄る。
「やー…ヤー、モチロン。」
言い訳を紡ごうとした舌でアレンは了解を紡いだ。
「場所は?」
「多目的ホールの…」
「待って。」
遮った人物がエリスだった事に、アレンやデイジーは驚きは隠せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!