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エリスの瞳はもう震えていない。在るべき位置に落ち着き、見るべきモノを捉えている。
「シェリル…あなたが、行かなきゃ。」
「……っ!」
シェリルはエリスをジッと見返した。
シェリルの表情が微動する。驚きと戸惑いを滲ませた肌の下に、熱を産みながら回る混乱が見えた。
「シオとラウルは…あなたの為に立ち向かっている。自分が傷だらけになるのを躊躇わずに…。」
シェリルは無言で瞳を伏せた。拒んでいる訳では無く、何かを想うように。
エリスはそっと、シェリルの両肩に手を乗せた。
優しくも、しっかりとした圧力がシェリルの肩に掛かる。
「行かなきゃ、シェリル。立ち向かわなきゃ。」
「でも私……。」
落ちた瞳をシェリルは戻す。
「何が出来るか、わかんない…。」
嘘だ。
何をするか、これはもうシェリルの中で固まっている。
たった一歩分の空白を前にして、シェリルは立ち尽くしている。拭い難い迷いが、心に纏わりついている。
「嘘。」
背筋を刺されるような衝動が走った。
「嘘だよね、シェリル?」
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