23.I & YOU

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その登場はまさに鮮烈だった。 彼女と出会う事を念頭に置いていた連中ばかりいたと考えると奇妙な話になるが、それでも彼らは驚愕していた。 一言も発せず、語れず。霞がかった沈黙が立ち込める。 ブリジットも、そうだった。 柄杓の皿をだらしなく床に着け、呆けたようにシェリルを見つめている。先程までの激高振りはすっかりなりを潜め、遠い目で静寂を身に纏っていた。 一番望んだ遭遇が、彼女の意に介さずに訪れた事に、何故だが彼女が一番驚いていた。 ブリジットは沈黙を保ったまま、何か探り出すようにシェリルを見つめた。 異質な空気の中、シェリルは確かに床を踏みしめた。 靴底からしっかりと、この場所を感じるように。 目前の大きな水の繭を見据え、大きく踏み出した。臆する素振りも見せず、勇ましさすら感じる態度で。 繭に手を差し入れ、強い流れに耐えながら、一気に中に入った。 誰も彼女を止めず、彼女のモノである事に違和感すら覚えるその背中を静かに見送った。
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