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「ゴメンね…ごめん…シオ、…もういいよ。」
「シェリル…?」
シェリルに優しく体を持ち上げられ、シオは床に寝かされた。
「いつもいつも、誰かに優しくされて…守られて…。私はそれに甘えきっていた。自分の意志で生きる事を忘れていた…。」
シェリルは立ち上がり、歩み出した。
「でもそれじゃ駄目なんだ。みんなが気に掛けてくれる、みんなが守ってくれる未来とちゃんと向き合わなきゃ、歩み出さなきゃ、手を伸ばさなきゃ…。」
ラウルを通り過ぎ、シェリルはブリジットに一番近い位置に立つ。
「シオ、ラウル…ありがとう。次は、私の番…。」
初めて聴いた、気丈な響きだった。
「みんなが繋いでくれた未来を、私が掴む。」
その眼光はブリジットを射抜いた。
ブリジットの沈黙は僅かに揺れたが、ブリジット自身は揺るがない。
柄杓の皿から大量の水を涌き出させ、ベルベットを構えさせる。
「…終わりよ、終わらせましょう。」
ポツリ、言葉を放つ。
「私は此処で何もかも終わらせる。」
殺意でも闘志でもない、刹那的な気が、この場に満ちた。
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