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「ベルベット!」
檄と同時にベルベットの布だらけの腕が伸びる。先端の刃は明確な殺意を帯びて、シェリルの喉笛目掛けて食らいつく。
足音無く詰め寄ったベルベットを、
シェリルは同じように足音無くすり抜けた。
「っ?!」
ブリジットとベルベットは同時に驚愕する間に、シェリルはブリジットに近寄ろうとする。カチューシャに似たゴーグルが煌めかせて。
カヴァーアイ。
ブリジットは間一髪、その存在を認識して反撃を繰り出す。カウントストマックを一部解いて、攻撃に転化する。
放たれた水流を回避し、シェリルは再度接近を試みるが、ブリジットは追撃を重ねた。
「サーペントスライサーッ!」
カウントストマックの水流が細長く変形し、曲がりくねりながら床に突き立つ。地面をジグザグに抉り、格子のように立ちはだかった。
「…っ!」
シェリルは足を止めて状況を見定める。
そんなシェリルをブリジットは虚ろげな瞳に映した。
「…あなたに突き立てなきゃ。忘れる前に、失う前に。」
亡霊の呪いのような語り口。
喉笛から生まれた柔らかい音の塊を、そのまま舌で運んで歯で整形した、蒼白な色味の声。
「私が…全く別の私に成り変わってしまう前にっ……!」
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