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「っ!」
振り払おうと柄杓を持ち上げると皿をシェリルに掴まれる。至近距離で主を抑えられてベルベットも手出し出来ない。
「…ブリジット。」
「私は、あなたが大嫌い。」
ブリジットは言葉を紡ぐ。
「好きな時に都合良く嫌いな自分を捨てられて、思う通りにならない流れに上手く乗られて。守っている仲間も、受け入れてくれる仲間もいる。」
「あなたにだって…。」
「私は、私は違う。今の私に…そんな価値は無いもの。悲しみを振りかざして、怒りを溢れさせて、嫌いな人を遠ざけて、壊そうとする悪人。過去を何時までも引き摺り続けて…独りぼっち。」
「悲しみは乗り越えられるモノじゃないの?」
「云わないで!」
ブリジットが鋭く声を上げた。
「分かっている…悲しみは必ず乗り越えられる、いや乗り越えなくちゃいけない。亡くした大切な人の思い出を心に秘めて、笑って生きなくちゃならない。でもね、私には出来ないの、怖いの…。私はこの悲しみを失いたくない。だってお姉ちゃんの事を想って泣かなくちゃ、ただ平和に笑って生きていく毎日の中でいつか忘れてしまう。私がお姉ちゃんをどれだけ愛していたのか、想っていたのか、泣いていたのか。それを失うのが…堪らなく怖い。」
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