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ブリジットの膝が折れ、崩れ落ちた。
華奢な体からは想像がつかない程、大きく泣き叫んだ。彼女を囲んでいた堤が崩れ、溜められた水が一挙に流れ出たかのように。涙を落とし、声を上げ、心を震わせた。
だが彼女は倒れない。
掴むモノも、寄りかかるモノも失して倒れ込む事は無い。
大きく嗚咽を漏らす彼女を確かに支え、受け止める存在が今はある。寄る辺ない心に拠り所がある。
ブリジットの悲しみにはなんら後ろめたさは無かった。陰を持たず、涼やかさすら感じる清澄さに満ちて輝いていた。涙に濡れたそれは更に磨かれ、煌めく。
シェリルに、暖かな波長が伝わる。疑いなきブリジットの温もり。
そこにある純朴な愛おしさにシェリルが気付いた時、
シェリルも涙を零した。
つまらない情けなんかではない。
ただ目に見えないモノが静かにシェリルの心の琴線を弾いていったのだ。
その琴線が奏でた詩を感じるまま。
二人は強く抱きしめ合った。
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