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「シオ。」
我を忘れて見入っていたシオに、ラウルが声をかけた。
ラウルは側に寄り添い、プレートを展開する。するとプレートが発光し、シオを包み始めた。肌に光が当たると同時に痛みが和らいで、傷が小さな疼きと共に失せていく。
「アメイジンググレイス?」
「まだ初歩だけどね。」
恥ずかしげにラウルは肩を竦めた。
「どうしたのさ?ボーっとして…。」
「いや…あの二人…。」
視線の先に折り重なる二人。
見ているだけでシオは気恥ずかしくなって胸の内がくさくさと乱れたが、それよりも嬉しさが沸き立った。
「良かったな。」
「え?」
「ホント、良かった。」
「…そうだね。」
蟠っていた栓が徐々に溶け出していくのを感じながら、二人を静かに見守った。
静かに静かに。
彼らを取り巻く空気も、静かに静かに揺らめいた。
流れは続く。
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