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シオが本調子で沈み始めたのを察したシャーロックとシェリルは俄かに慌てた素振りを見せる。だがヲリエは構わず、続けた。
「…今のキミを見て、悩まなくてもいい事にハマっている子がいる。彼の心を解き解せるのは、キミだけよ?」
「彼…?」
シオは首を傾げ、思索する。ふと、思い付いた顔を浮かべる。ハッと見開いた瞳が切なげに揺れた。
「さて、年上のお姉さんの説教は終わり。」
ヲリエはすくっと立ち上がった。
「…後味悪かった?ゴメンねー、年取るとリアリストなとこばっか出てきちゃってさぁ。」
無邪気に自嘲しながらヲリエはつかつかとベッドを離れていく。
「あのう。」
「ん?」
呼び止めたのはシェリル。
「ありがとう、ございました。」
「えっ?…いいよ、ぶっちゃけ嫌だったじゃん?」
「そんな事ありません。」
言い切るシェリルの声色は、重い。鈍重な金属では無く、麗らかな温かみが隠ったトルコ石のような感触がある。
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