25.手合わせ

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「結局恥の上塗りでしたわね。」 「…アンタ一回締めとく必要がありそうね。」 ルキアの挑発にレオノーラはすぐさま表情を変える。眉を逆立て怒気を丸出しにルキアを睨み付けた。 「…下らん。」 激しい感情が高上る中で冷めた声音が流れ込む。その声の主に、二人は勢い良く振り向く。 声の主、英黛は眠そうにうなだれる瞼を開いて二人を見返した。 「二人揃って喚き散らすな。喧しい。」 「黛ぃ…アンタうぜぇんだよ…!」 「無神経な殿方ですこと。」 黛に反目で返す二人だが、黛の乱入に白けて矛を収めた。だが、憤然とした態度が静まらないレオノーラは隣に座っている少年を標的に定める。 レオノーラの怒りの捌け口に定められた事に気付いた少年は冷や汗を流しながら震え出す。 「あ、あのぉ…。」 「ハーレェ…アンタのピアノの鍵盤に靴底を押し付けてやるからな!」 「な、な、な、理不尽なぁ…。」 半ベソ掻きながらハーレ・カーミックはレオノーラに縋りつく。 鳶色の髪に群青色の瞳。細身な体に穏やかな目鼻立ちが気弱な印象を与える。 「険悪な雰囲気はやめようぜ、仲間だろ?」
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