25.手合わせ

6/12
前へ
/913ページ
次へ
エドガーの一声に全員口を噤む。何かを同時に納得したように綺麗に沈黙が並ぶ。 改まった面持ちでリカルドは咳をしてその場を見渡した。 「…ルキア、アイツは…ゼルはどこにいるのか判らないのか?」 「存じ上げませんわ。」 ルキアはツンケンした態度を変えない。だがゼル、という名前が出た時に僅かに眉を揺らした。 「まさかだとは思うが…」 リカルドが言いかけた言葉にルキアはいち早く反応して、血相を変えた。 「違いますっ!彼はまだっ…!」 「喧しい。」 ルキアの動揺に黛が釘を刺す。先程の苛立った様子は無く、静かに被せるような語り口だ。 「一々取り乱すな。」 「…っ!」 ルキアは唇を噛み締めて、飛び出しそうな言葉で呑み込んだ。 「ルキアちゃん…。」 「……。」 ハーレはルキアを痛ましげに見やるのに対し、レオノーラは意味深に思索している。 別の空気が立ち込め始めた場を、次はエドガーが手を叩いて一新した。 「あぁ~、止めろ止めろ!暗いのは勘弁だ、今からポーカーでもするか?」 「…ルールがわからん。」 「ルールなら教えるよ、黛クン!」 首を傾げる黛をハーレは慌てて取りなす。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加