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「面倒臭いよーアイツとまともに向き合おうとすんのはさ。」
「そんな事…!」
ムッと、眉間に皺を寄せるシオをアレンは右手で制した。口をストローから話す。
「アイツはさ、サンドハーストに入って心底怯えてるんだ。」
「怯えている?」
「中学の時のアイツは…まぁ今とあんま変わんないっつーか、まんま同じなんだけど今ほど悩ましく生きちゃいなかった。バッカみたいに正義を振りかざしてさぁ、カツアゲしまくるウザいチンピラいれば即締めに行くみたいな。腕っぷしは強かったからさ、適う奴はいなかったんだ。だからアイツは100%自分の正義を執行できた。お陰で色んな弱者に頼られる奴として在り続けられたワケだ。」
やけに皮肉めいた口振りをシオは複雑な想いで耳にする。だがアレンはノスタルジックな瞳で回想に耽る。
「元々アイツは、そんな奴。責任感とか、正義感がやたら強くてさ。困っている人いたら放っておけない、弱っている人がいたら守ってやる。アイツ曰わく、それが普通なんだとさ。リクはそれをずっと貫き通してきた。アイツが送ってきた普通の人生で唯一普通じゃないとこかな。こんな性格が、アイツの心を大きく占めている。アイツの努力は、それを貫くためのプロセスなんだよ。」
なんて雄弁なんだろう。
アレンは自分以上にリクを語れる人間であり、そんな関係なのだ。
シオの心に関心めいたモノが芽吹く。
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