26.アンダードックズ・ビュー

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「それでも、アイツが此処にいるためには中途半端な力をどうこうしなきゃならない。ただいるんじゃなくて、アイツが一番納得できる形で、誰かと生きられる為に。」 「居場所を、守る為に?」 「そう、自己防衛。…ちょっと違うか。」 「じゃあ…どうしようも無いのかな?」 「そうでも無いさ。」 沈みかけたシオの面持ちを、アレンの瞳が留めた。 「居場所を無くしそうな奴がいたらさ、繋いでやればいいんだよ。」 「繋ぐ?」 「そう、体のどっかを掴んで、自分とソイツを繋いでやればいい。そしてソイツもまた誰かを繋ぐようになればいい。居たい所にいる理由なんてそれで生まれるんだよ。自分を繋いでくれる人がいて、そして自分が繋いでいる人がいる。あぁ、無くすどころか動けなくなっちゃいそうだな。」 頬を緩めながら、アレンはまた遠い目をした。 「ま、リクの場合、人の事ばっかで、自分が繋がれている事忘れちゃってるんだよね。」 初めはリクに巡らせていたシオの想いは、気付けば一巡りして、自身に行き当たっていた。 「無論、居場所を掴むのはリクだけにしか出来ない。俺達に出来る事は、本当に独りにならないようにせき止めてやるだけさ。」 余裕そうな態度をアレンは一度も崩していない。柔和な笑みにウィットに富んだ語り口調。 ただキープされたその姿勢の中に秘められた寂しげな炎に、シオは気付いていなかった。
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