26.アンダードックズ・ビュー

16/25
前へ
/913ページ
次へ
うんざりとした面持ちで、リカルドが立っていた。呆れと微かな苛立ちが混じった視線をリクと月虎に交互に向ける。 「よぉーっす!リカルドちん!」 「くびるぞバカクズ。」 すぐ様リカルドがフレンドリーに挨拶する月虎に断固とした悪態を叩き込む。月虎は舌を出しておどけて返す。 「フラフラと勝手に抜け出して来やがって。お前には色々覚えておいて欲しい事が多々ある、来てもらうぞ。」 「ンだよー毎日毎日!いい加減解放しろよなー!」 「少しでも脳味噌のメモリを増やしてくれたらいいんだがな。」 全く縁遠い存在である三年生のトークに、一年生のリクは容易く入れない。つつがなく流れる言葉の応酬を、取り残された漂流者のようにリクは呆然と二人を見詰める。 そんなリクに、リカルドはやっと意識の矛先を割いた。 「月白、リクか…。」 「えっ…初対面じゃ…。」 「書類の上でよく見かけるんでね。思いの外親近感が湧く。」 淡々とした口調だが、皮肉を投げ掛けられたと気付いたリクはバツが悪そうに顔を伏せる。恥ずかしさで耳朶が赤く発熱した。 「コーハイいじめんなよぉ!性格わりぃな。」 「お前はこの後輩よりモノを知らない事を忘れるな。さっさと来い。」 「だぁーからよぉ…!」 月虎は頬を膨らませて抗議するが、半ばでふと動きを止める。少々思案した後、ニヤリと微笑んだ。 「よっしゃ!じゃあ俺を連れて行きたきゃ力付くできな!」 「ハァ?」 リカルドが露骨に困惑したのを見ても、月虎はふてぶてしく胸を張る。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加