26.アンダードックズ・ビュー

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「別に難しい事云ってねーだろ?かかってこいやぁ!って事だぜ?」 「力付くでお前を連行する理由は持ち合わせてないぞ。と云うか時間の無駄だ、非効率的だ、果てなく無意味だ。冗談はやめてさっさと…」 リカルドの言葉を、鋭い一発の蹴りが遮断した。リカルドの顔の真横に、不作法な月虎の足が並ぶ。 「両ノ手最弱の俺など戯れにすらならんだろう。」 卑屈さより傲岸さを感じさせる謙遜だ。 いや、それよりも… 「またまたぁ!御冗談を!」 月虎は舌なめずりをして戦闘体勢を形作る。その時、左手の親指の指輪が、艶めかしく煌めいた。 「両ノ手…?!」 リクはただ驚愕する。気さくに会話していた男がそんな立場にいたとは考えもしない。 戦闘体勢を取った瞬間、吹き抜けるような闘志が満ちる。月虎の、ブラウンの瞳は闘志で光沢を増す。リカルドとの間合いを静かに測る。 一方のリカルドは月虎に退く意志が無い事を悟り、嘆息した。ポケットから革の手袋を取り出す。 黒い色合いに指に添って赤いラインが敷かれているそれは、味気ない雰囲気を醸していた。リカルドの長い指が目立つ手をすっぽりと覆い、無愛想に黙する銅像の手のような形に変えてしまっている。 「おっ、ようやっとやる気かい?上々!楽しもうぜぇ?」 「…お手柔らかに、な。」 リカルドは指を鳴らした。
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