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グシャッ!!
岩を差し向けた突進を受けたリカルドが、突出部の壁に叩きつけられた瞬間、後味の悪い音が鳴った。そして気まずい沈黙が場に流れる。
「嘘…だろ…?」
リクは唖然とその光景を見詰める。リカルドが反撃をする気配は無い。
「素手で岩をねじ切った…、いや、リカルドさんがヤバい…。」
月虎へ対する驚愕とリカルドへの心配が交差し、何に反応するべきか逆に迷ってしまう。どちらも等しく凄絶で、突然で、そして異常だった。リクの感覚と常識は、魔法が使える存在にしては聊か平常過ぎた。
心は忙しく右往左往している。
「月虎さん!」
ようやっと心を鎮めて、リクは云った。
「やり過ぎッスよ!こんなの…ケガじゃ済まない…!」
「頭っから信じんなよなぁ、アイツのジョーク。」
月虎が呆れ顔を向ける。
「人間の強さなんてトキトバアイで幾らでも変わるっつーの、ンでアイツはその事をよく知ってる。」
発言の末尾に、歪な音が混じる。見れば、リカルドを押し潰している岩に罅が入り、そのまま脆く崩れ落ちた。巻き上がる砂塵の奥から、ブレザーを汚したリカルドが現れた。
不機嫌そうに眼鏡を拭きながら、軽く髪を直し、スムーズな動作で眼鏡を掛ける。
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