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「俺みたいなぺーぺーでもよ、リカルド相手に張り合えるんだぜ?気の持ちようだぜ、リク。」
「でもアンタは…」
生まれながらの能力、と言いかけてリクは止めた。卑屈な言い訳だ。リク自身、月虎が持っていないモノを、大小に関わらず持っている。
惨めな妬みを開けてしまったような気がして、後ろめたさでリクは萎んでしまう。
「俺はよぉ、力になりてぇダチがいんだ。」
「え?」
「わっかりやすいハナシだよ、俺の戦うリユー。」
月虎の眼差しに追想の趣が微かに入る。
「そいつはやさぐれた、詰まんねぇ俺が強いって、優しい奴だって認めてくれたんだ。独りでツッパる事しか出来ねぇ野郎にさ、そんな事云ってくれたんだ。」
次にリクに眼差しが向けられた時、それは何かを心の奥底から引き上げるよう促す強さを秘めていた。
「俺を信じてくれてる奴の為に戦う。俺の持て余しちまうこの馬鹿力をどっかに預けるリユーなんざこれだけでいいんだ。」
「でも俺は、…アンタみたいに強くない。理由を作っても、その通りに生きられない…!」
勝手に声が震えて、嗚咽に似た乱れが混じる。体裁なんて忘れていた。リクは内にある情けなさをもう全部見せていた。
大柄な体躯が縮み、引き締まった体は硬度を失ってグニャグニャに溶けてしまうような感覚がリクを包む。一抹のプライドの存在も許されない、冷厳な世界の中でリクは、あるがままの自分で立ち尽くしていた。
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