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「あ…リク…大丈夫?」
気まずそうにシオが声を掛ける。すっかり疲労の色を丸出しにしているリクに対し、シオは汗を軽く流しているくらいで凛然と屹立している。華奢な体躯が、いつもより逞しく大きく見えた。
「問題…ねぇ、やんぞ!」
リクは視界の歪みが治る前に、がむしゃらに挑みかかった。シオは遠慮がちに一刀を弾いた後打ち込みに掛かる。
「なんか…鬼気迫ってる感じだよね…リク…。」
傍らで見守るラウルが呟いた。隣でシェリルは溜め息をついた。
リクの動きはただ勢いだけが目立つ。鳳嘴の軌跡は歪な、乱雑な円を描くばかりで美しさは無い。鳳嘴を振るう度に焦りが露わになり、それが余計に拍車を掛ける。先細りしていくように、勢いばかり乱れて行く。
「ぐっ…!」
乱れた呼吸の隙を突いて、シオの杖がリクの胸に食い込む。
リクは杖を掴んで力任せにシオを持ち上げる。さすがにシオも予想つかず、宙で足をばたつかせる。
「ン!」
リクは回転をつけてシオを投げ飛ばす。そして着地点を予想して距離を詰めた。
が、シオはリクが接近する事を予期し、体を回して床にピタリと、四つん這いに着地する。
「っ!」
リクが反応するより、早く、杖で足を払う。
リクはまた、地に倒れ込む。
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