27.トゥー・ビー・フリー

3/18
前へ
/913ページ
次へ
「あ…リク…大丈夫?」 気まずそうにシオが声を掛ける。すっかり疲労の色を丸出しにしているリクに対し、シオは汗を軽く流しているくらいで凛然と屹立している。華奢な体躯が、いつもより逞しく大きく見えた。 「問題…ねぇ、やんぞ!」 リクは視界の歪みが治る前に、がむしゃらに挑みかかった。シオは遠慮がちに一刀を弾いた後打ち込みに掛かる。 「なんか…鬼気迫ってる感じだよね…リク…。」 傍らで見守るラウルが呟いた。隣でシェリルは溜め息をついた。 リクの動きはただ勢いだけが目立つ。鳳嘴の軌跡は歪な、乱雑な円を描くばかりで美しさは無い。鳳嘴を振るう度に焦りが露わになり、それが余計に拍車を掛ける。先細りしていくように、勢いばかり乱れて行く。 「ぐっ…!」 乱れた呼吸の隙を突いて、シオの杖がリクの胸に食い込む。 リクは杖を掴んで力任せにシオを持ち上げる。さすがにシオも予想つかず、宙で足をばたつかせる。 「ン!」 リクは回転をつけてシオを投げ飛ばす。そして着地点を予想して距離を詰めた。 が、シオはリクが接近する事を予期し、体を回して床にピタリと、四つん這いに着地する。 「っ!」 リクが反応するより、早く、杖で足を払う。 リクはまた、地に倒れ込む。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加