27.トゥー・ビー・フリー

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「…くそっ!」 肩を上下させながら、リクはしゃがみ込む。 「…気負い過ぎだよ、リク。攻めの一つ一つを制御出来ていない、それじゃあ空回りする。」 「わりぃ…。」 リクは天を仰いだ。電灯が付いた天井が見える。混じり気の無い色味の木材が梁、柱として複雑に重なり、折り合う。狭間から零れる灯りは手こそ届かないが、そう遠くない。 どうにかすれば、届くような気がした。 「次、私が行くね。」 レイピアを片手にシェリルが歩み寄る。シオは胸に手を当てて深呼吸、バイオリズムを整えた後頷く。 「よし、いいよ。」 シェリルが頷き返したや否や、シェリルはレイピアで鋭い突きを繰り出す。シオが後退してやり過ごしても、突きは素早く連撃に成り変わる。シオは一気に体勢を下げて足を狙う。 しかしシェリルは前方に宙返りし、足払いをかわすと下段を薙ぐ。シオはそれを横に回ってかわし、杖で突く。 「実物の武器使ってるのもあるけど…迫力あるなぁ。」 嘆息するラウルに対し、リクは静かに見やる。冷めているワケでも、達観しているワケでもない。眼前で繰り広げられる躍動感ある戦いに心は羨望で高鳴っている。上手く言葉に出来ないから、黙したまま見ているのだ。 「リク?」 「…あぁ、何?」 「どうしたの?なんか黙っているけど…。」 ラウルの声には遠慮の含みがある。
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