863人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ…、ただビックリしてるだけだよ。」
気を使わせないように極力朗らかに云ったつもりだったが、どうにも堅い。ぎこちない舌回りにリクは自己嫌悪する。
「あんな風に…俺は戦えねぇ。」
「リクはほら、体格が違うし…さっきの組み手は戦い方自体間違って無いし…」
「まだあんだろ?」
「あぁ…うん…。」
「云えよ、濁される方が嫌いだ。」
「ゴメン…。」
ラウルは頭を掻いて調子を取り持つ。
「純粋に攻め急いでる。動きがガツガツしてるから、手を読まれてしまう。」
「…だよなぁ。」
胸に巣くう靄を排するような大きな息を吐き出し、リクは仰向けに倒れた。
「くっそぉ…。」
「リクは今からでも強くなれるよ。素質あるし。…お世辞じゃないよ?」
「あんがと。…でも足引っ張ってるよな、俺。」
「まさか!貴重な戦力だよ、リクは。」
「魔法も剣術も半端な奴だよ、俺は。」
「ネガティブ過ぎるのは良くないよ、リク。」
ラウルの声には遠慮の代わりに不安が癒着している。
「大丈夫、切り替えるからさ…。わりぃ。」
らしくない。
ダンジョンプレイでの果敢ぶりが一番網膜に焼き付いていたラウルにとってこんなリクは珍しいじゃ済まなかった。
最初のコメントを投稿しよう!