863人が本棚に入れています
本棚に追加
「吼えたてろぉ、バスク!」
快活な一声と共に巨大な魔犬が現出する。ビロードのような艶やかです滑らかなダークブラウンの毛皮、その下で生き生きとした筋肉の鼓動が蠢く。パックリと割れた、巨大な吻部からは涎で濡れた鋭利な牙が見え隠れする。歯茎は赤黒く膨らんでいた。
瞳は赤い。色濃い血を水晶に落としたように。闘志と凶暴性が疼いている。
バスクは低く唸った後、高々と咆哮する。道場内に野太い振動が響き渡る。
「いよっしゃああぁぁ!!召還成功ぉぉぉ!」
バスクの肩をバンバン叩きながら、シャーロックがはしゃぎ回る。
「どーよ、どんなもんよ!」
「上出来ね!惚れ直しちゃうわ、シャーロック。」
「イヤッフゥゥゥ!!」
エリスに誉められてシャーロックの気持ちはすぐさま有頂天に駆け上る。
「スゴいよねぇーシャーロック。」
出して見せた召還体に、シャーロックのはしゃぎように、アレンは足を止めて呟く。
「突貫で召還体精製しても案外上手く行くしねぇ…。リクも覚えてるだろ?」
「昔の話だよ。」
リクの視線も並行する。
「シャーロックみたいに大きな召還体作れるのもスゴいけど、リクのスクァッシュも簡単に出来るモンじゃないさ。あんな悪ガキ早々作れやしない。」「たまたまだっての。」
リクは小さく笑った。
シェリルとシオの組み手はまだ続いている。
いつまでも、鮮やかなまま。
最初のコメントを投稿しよう!