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夜。チュートリアルハウス中庭。
中庭と云っても実際に屋外に在るわけじゃない。運ばれた土と芝、樹木で体裁だけを整えた作り物だ。夜空に見えるのはオーロラビジョンで作られた鮮明でリアルな映像だ。温かみは無いが、艶っぽい闇と点々とした星、そして亡霊のように蒼白な月。
紛い物だが幸いにも満月だ。これだけあれば月見も出来るし、宴も出来るだろう。だが紛い物は紛い物。突き詰めればただの二次元の異物だ。
満たされる事が無い偽りに、リクは見向きもしなかった。
「灯れ…スカッシュ!」
山吹色の珠からスクァッシュが表出する。
「なんかヨーか?」
「いつもの事だよ。」
カボチャの被り物がガクリと揺れた。
「…詰まんね。」
スクァッシュが宙を舞った。リクの頭上より遥か高い位置まで上がる。
「ジャック・オー・ロケット!」
大量に出現したジャック・オー・ランタンが、オレンジ色の軌道を描いて突進する。
リクは鳳嘴を握り締め、落ち着いて間を測る。然るべき機が熟した瞬間、リクは抜き放った。
一発目を叩き落とし、流れるように鳳嘴は弧を辿る。冷静な理性が動かす刃は研ぎ澄まされた勢いに乗ったまま、全てのジャック・オー・ランタンを破壊した。
「…フゥ!」
昼間の演習の時より消耗していない。磨かれた所作と沈着とした意識は潤滑な運動を可能とする。
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