27.トゥー・ビー・フリー

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「よしっ、今度は上手くいった…!」 確かな手応えを掴んだ充実感を噛み締めるリクだが、スクァッシュは被り物越しから冷めた気配を漂わす。 「どうしたよ?」 「お前、楽しそうじゃない。」 リクは首を傾げる。 「すっげぇ冷めた感じがする。なんかこう…無感情…みたいな。」 「何だよ、それ?」 「…見てて不安なんだよ。」 ブスッとした様子でスクァッシュは云う。スクァッシュの素顔を、リクは一度しか見た事無い。それも初めてスクァッシュを召還した日だ。もう二年近く昔の話になる。今になっては記憶が曖昧だ。覚えているのは輪郭くらい。スクァッシュに云えばまたプリプリ怒り出すだろうから口にはしていない。 だが、スクァッシュの素顔にリクは相当驚いた記憶がある。深々と海馬に刻みつけんばかりの衝撃を受けた記憶がある。 なのに、忘れてしまった。 何故だろうか。 「リク!」 ハッと我に返る。 「腑抜けんなよ、バカ!」 リクは何も言い返せず、溜め息を零して頭を掻いた。その様に、スクァッシュは益々息巻く。 「…お前さぁ!いっつも誰かの為に戦いたいとかなんたら…ほざいてるクセによぉ!いっつも…」 「落ち着けよ、スカッシュ。」 軽く被り物を小突いてやると、 「スクァッシュだっての…。」 スクァッシュは不満げに答えた。
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