27.トゥー・ビー・フリー

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ふと、新しい足音が中庭に入り込んで来た。リクは思わず身構えて、気配を窺う。 「あれ?誰かいるのか?」 聞き慣れた声。幼さがまだ抜けきっていない、朗らかな響きはシオのそれだった。 「シオか…。俺だよ。」 「リク!まだ起きてたの?」 「お前もだろ?自主練か?」 「違う…かな。ちょっと、寝付けなくて。」 暗がりの下でシオはフッと微笑む。気兼ねは無いようだ。 「緊張か?らしくねぇな。本番は明後日だぜ?」 「初めてでさ、何だかワクワクするんだ。」 試験が初めて?ほんのりした違和感を抱いたリクだが口にはしなかった。 「自主練すっか?…ってぇもう疲れてるか。」 「リクもだろ?」 シオに諭され、リクは冷えた汗を拭う。見上げるスクァッシュも、そう表情で云っていた。 「スクァッシュ、久し振り。」 「おう、シオ。」 スクァッシュはシオに手を上げて挨拶した後、ジッと間を置いて見詰めた。シオが首を傾げると、スクァッシュは頭を振って視線を反らす。 「リク、オレ戻る。」 「ああ?まだ魔力は続くぜ。」 「そういう気分。」
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