27.トゥー・ビー・フリー

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スクァッシュが山吹色の珠となってリクの体に還元していく。シオはその光景を見ながら、思索する。 スクァッシュが被り物の、おどけた形にくり抜いた眼窩から送られる寂しげな視線の意図。シオに訴えかけるように、促すように。切実な、痛切な想念。 「ハァ…なんだよアイツ。」 「スクァッシュと特訓してたんだ?」 「良く発音出来るな、アイツの名前。」 「名付け親の癖に。」 談笑しながら、二人は並んで腰を落とした。季節にはまだ早い、背の高い夏草が揺れる。 「たまにやってんだ。やっぱ二人だと効率いいしな。」 「いい相手だろうね。」 「アイツは自我こそ強いけど、やっぱ俺の一部だからさ。どっか考えてる事ダブるんだよな。…何やかんやで召還体さ。」 「違うよ。スクァッシュはずっとリクの傍にいるじゃん。自分の意志でさ。友達だよ、スクァッシュは。」 「クサい事云うよな~お前。」 鼻の頭を掻きながらはにかむリクだが、 「まぁ、アイツといると独りじゃないよな。」 とくすぐられたように笑った。 最近見せなかった優しさがあった。
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