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「調子はどう?」
「ボチボチ、かな…。」
「頼りにしてる。」
「やめてくれ…。なぁ、シオ。」
リクは何時になく真剣な瞳になる。夜空に向けられていても、ずっと奥を見透かしている。
「足、引っ張らねーようにすっからさ、頼むわ。」
「リク!卑屈なのは良くないよ。」
「わかってる。」
斬るように云って、リクは寝転がった。
「こんな気持ち抱えてるのってみっともなくて迷惑な事だってわかってる。でもよ…今の俺で見えない先に進むのが、少し怖いんだ。」
シオは少し間を置いた。呼吸をして、頭の中に描いた文をゆっくりリピートする。そして一文字一文字を照合させるように、丁寧に話し出す。
「みんな同じだよ。先なんてわからない。手探りでそぞろ歩きで進んでいる。でも後ろに誰もいないのが怖いから、誰かと繋がろうとする、結び付こうとする。」
「でも強い奴は一人でも行ける。」
「うん。でも、俺は…弱いんだ。ダンジョンプレイで独りで戦う弱さを知ってから誰かと一緒に戦わなきゃ不安になる。」
「…そうなのか?」
「リクは、買い被り過ぎなんだよ、俺の事。」
シオには珍しい、喉笛を小刻みに鳴らす音が鳴る。
「俺はみんなに縋らなきゃどうにもなんない時がある。」
「何でだよ?」
またシオは間を置いた。今度は躊躇い。
「二年より前の記憶が無いから…俺。」
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