27.トゥー・ビー・フリー

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「あぁ…」 不出来な引用だがリクには伝わったようだ。 「初めての場所で初めての人にあった時の感じか?」 「そう、…回りくどくてゴメン。」 「いや、わかるよ。俺も経験あるしさ。」 「そっか…。」 シオの語調は滑らかに流れる。胸の内は幾分リラックスしているようだ。 「初めてサンドハーストに来た時、ずっとワクワクしていたんだ。もう心が勝手に高鳴って、やりたい事とか、楽しみな事がグルグル回って。どうしようもなく有頂天だったのに、少しずつ少しずつ…不安が滲み出て来るようになったんだ。俺は欠落しているモノがたくさんあって、皆とは全く違う人生歩んできた。俺はこの中じゃ異端じゃないかって…いてはいけないんじゃないかって、不安になって…さ。」 リクは黙って、最後まで聴き届ける。普段は淡々としたシオが正直に自分の本心を打ち明けている、これを遮るわけにはいかない。潔い、涼やかな心で受け入れるべきだ。 リクはそう判断していた。 「だから、独りで戦ったりとか、していたのか?」 「独りで戦うのは、俺が元々身に付けていたスタイルなんだ…仲間と戦う経験が無かったから。でも…そこに留まって…そう戦う事に躍起になっていた。怖かったんだ、幾ら心惹かれるモノでも、全てを受け入れてしまう事が。」 「お前はよくやってるさ。」 シオに温かく励ましを入れて、リクは続けた。
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