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「実際、今お前楽しいだろ?独りじゃない生き方は独りよりずっとたくさん得るモノがあるし。」
「うん…」
シオは遠慮がちに瞳を上げる。意志が汲めずにリクは首を傾げた。
「俺は、ダンジョンプレイでそれに気付いた。独りじゃどうにも出来ない状況も、仲間と連携すれば逆転出来る。それだけの可能性と力が在るんだって実感した。教えてくれたのはリクだ。」
瞳を合わせて云われて、リクは少し照れる素振りを見せた。
「でも、今のリクは独りだ。」
「……!」
「誰かを守りたいって云っているのに、リクはいつも独りで戦っている。」
言葉を重ねる毎にシオは澄む。鋭い輝きがリクを射し貫く。
「俺の力が弱いのは俺の責任だから…。」
「リクの弱さはリクのモノだ、だけどリクという存在は色んな人と繋がっている。リクがそうやって苦しみの中で自分を閉ざしているのは、悲しい事だ。俺達との繋がりを断たれたみたいで…。」
リクは押し黙り、ジッとシオを見返した。
「リクが仲間の為に戦えるから、俺も戦える。だからリクも俺達と向き合ってくれ。一緒に、強くなろう。」
暗がりに斜陽が落ちてきたように、リクの心はシオの想いに照らされる。こんがらがった解れはもう消え失せていた。解けたワケでもないのに、勝手に立ち消えた。
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