27.トゥー・ビー・フリー

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シオは持ってきた杖を構えて、気を整わせるように呼吸する。 「ふう…では、改めて。」 「…了解。」 リクは鳳嘴で応じ、先手を取った。 踏み込みと同時の薙ぎ払い。綺麗な半円の軌跡を、シオは杖で遮る。唐突に打ち込まれた杭に阻まれたかのように、リクの鳳嘴は痙攣しながら行き詰まった。 シオは鳳嘴を押し退けて杖でリクを遠ざける。しかしリクは杖の打撃をかいくぐり、右腕を目一杯伸ばして刺突を打ち出す。 「っ?!」 予想を越えられたシオは頭を傾けてかわし、距離を取った。 「リク…?!」 「あぁ?」 「意外と…、うん。」 一人心地で納得しているシオにリクは訝しげな視線を送る。 「いや、リクは…やっぱ強いなってさ。」 「俺が?」 「うん。一撃一撃…突き抜けている。」 「まぁ…いつもより気持ちいいかな。」 汗を拭い、リクは瞳を瞬かす。そして、踏み出した。 軽やかに跳ね合う影と影。闇とはまた違う色味の黒が交差する。無駄のない、溌剌とした動きは流線型のような洗練された流れがあった。シルエットだけでも伝わる活気と勢いが晴れやかに滲み出ていた。 長い宵の下、燃え尽きていく一瞬一瞬は確かに光り、輝きを重ねていた。
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