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交わされ合う息と息の軌跡を、瞳に焼き付けたがい速度で煌めく瞬きを、静かな窓辺に凭れて見下ろす人影が一つ。
人工の月明かりに、仄かに金髪を青白く染められている少年。
アレン・スチュアートはただ黙って二人を見守る。蛍光灯が幾つかあるだけの廊下を包む無機質な光に溶け込んでしまいそうになる程切なげに沈黙していた。
「単純…。」
思わず零れた笑みが、言葉を綴る。
「何さ~…どん詰まりに勝手に突っ込んでおいて勝手に再帰?ホンキィ・トンクじゃポンドは貰えないっつーの…。」
調子は明快だ。軽口もジョークも叩ける。
安易な安心感が募った。
視線はシオに移る。
リクとは対照的に細やかな足取りと俊敏な体運びをする一回り小柄な影。身の丈はある杖が旋回し、リクの鳳嘴とぶつかり合う。
「シオがねぇ…。まだ会って一ヶ月と少しなのにもう仲良いよねー…。」
窓際で腕を組んで顎を乗せた。
「あそこにいたのは俺だっての…。」
月光が入り込んだ瞳は白く滲んでいた。僅かに名残がある青みは、欠片だけを差していた。
夜は深まる。
あらゆる感情を内包した事を見せないように。
闇夜は背を向けた。
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