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「機嫌…損ねた?」
規則正しい歩調で進むリカルドにサリア・リンクスはためらいがちに話し掛けた。
ライトブラウンのポニーテールを揺らし、赤縁の眼鏡をかけている。
「白けただけさ。毒気を抜く奴はいくらでもいるからな、一々腹を立てているのも疲れる。」
その口調からは感情の起伏は感じられない。ただ空気の間を声が滑り込んでゆく。
「アレはアレで何するかわからないしな。明日が楽しみだ。」
わずかに語調が上がった。
「でも5 in 2 を出す必要があるの?アレに当たるとオーディションにならないわ。」
「残念ながら彼らは四人しか呼べていない。アルフレッドは聊か盛り上がりに欠ける。」
「四人でも充分だわ。」
「ダンジョンプレイは上級生を五人出すのが伝統だ。違える事はできん。」
リカルドにピシャリと云われ、サリアは不満げに黙り込む。
「模擬実技演習は見ておこう、5 in 2をぶつける相手は慎重に選ばねばな。」
「随分ハードな洗礼ね…。」
「洗礼?いやいや、これは選別さ。」
リカルドが振り返り、初めて笑みを浮かべる。
「入学生は大体二つに分けられる、『我々に従う』か『従わされるか』だ。こちらがすべき事は前者には命令を、後者には調教を与える事だ。そしてその選別を明日行う。」
「両方に属さない者はどうするの?」
「そんな者は存在しない、いや正確には明日から存在しなくなる。」
リカルドが目を細めた。
「その者は徹底的淘汰する、徹底的にだ。レイルの邪魔立てをされる前にな。」
リカルドの残酷な言葉にサリアは身震いした。リカルドは再び表情を素面に戻し、歩みを始めた。
「利有る者には富貴を、利無き者には鉄槌を。」
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