28.ランダムナイトメア

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チュートリアルハウス、実技試験場。 ごった返す一年生達の群は、ある規則に基づいた形に纏まっている。空気間に漂う緊張感は彼らを知らず知らずのうちに早口にさせた。忙しない言葉のやり取りが飛び交う。 だが集中を切らせないそんな中でも、彼らの視線を惹き付けて止まない代物が、この部屋の中央に鎮座していた。 薄い青色のラバーが貼られた床の上、日光が燦々と舞い降りる天窓の下。日常的な空間では無いこの部屋の中でさえ、異質な雰囲気を、それは醸し出していた。 巨大な球体が台座の上に置かれている。表面を薄く覆う透けた白い外殻の下には時折虹色に揺らめくアイボリーの核が見える。四つのドアが付けられているのを見ると建造物に類するのだろうが、外観だけでは独創的なオブジェにしか見えない。 (どうやって運び込んだのかな…。) シオはそんな素朴な疑問を感じながら、未知が溢れるその存在に心躍らせる。 「はいはいはい!見物用じゃないからね~さっさと並びな!」 明快な発音とテンポで、女教師が呼び掛けた。 ウェーブが掛かったダークブラウンの髪を頭の後ろで束ね、垂らしている女教師は見かけは二十代半ばに見える。薄い緑色の瞳が置かれた目は少し細めで、形良い。用心深そうに引かれた眉に柔らかげに膨らんだ唇が対照的だ。女にしては長身で無駄の無い、引き締まった体つきをしている。 「説明するから整列して下さる?重要だから集中してね!」 気さくな口振りには威厳がない、丸まったニュアンスが感じられた。
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